ストレス
「最近、ストレスがたまって」など、私たちはストレスという言葉を日常語として使っていますが、その正体となると答えられない人が多いようです。ストレス自体は病気ではなく、人間にとって必要不可欠な生体反応ですが、対応を間違えると自律神経失調症や胃潰瘍などの病気を引き起こす原因にも。ストレスを正しく認識し、上手につき合っていく方法を身につけ、ストレスに負けない生活を送りましょう。

ストレスって何でしょう?
ストレスは悪いもの、という考えが一般化されていますが、ストレスなしに生活することは不可能ですし、うまく適応できれば活力ある生活を送るための糧、いわば、人生のスパイスとなります。例えば、スポーツ選手が大会で自己新記録を出すケースなどは、ストレスがプラスに働いたためともいえるでしょう。
ストレスは医学的には「寒冷、外傷、病気、精神的緊張などが原因となって、体内で起こる非特異的な防御反応」のこと。もう少し分かりやすくいえば、「外部からの刺激に対して、それに順応しようとするための体内反応」ということになります。
人間の体は外部からの刺激に対し、常に一定の安定した状態を維持できるように調節されており、これを「ホメオスタシス(恒常性の維持)」といいます。
外部から刺激を受けると、ホメオスタシスは一時的に乱れます。このとき、驚きや怒り、悲しみの感情などが起こります。さらに、内分泌系、自律神経系なども反応して、乱れたホメオスタシスを元に戻そうと働きます。この一連の反応がストレスなのです。
ストレスがかかっても、気分転換などでストレスを解消すれば問題ないのですが、繰り返し起こって蓄積されると、さまざまな病気の原因となります。

どういうときにストレスを感じるのでしょうか?
天候や騒音、対人関係など原因は多岐に渡ります
ストレスの原因となる刺激を、「ストレッサー」と呼びます。ストレッサーは、外部的な要因と内部的な要因に大別されます。
〔外部的ストレッサー〕
1.物理的刺激
寒さ、暑さ、やけど、けが、騒音、振動、海底作業、電気ショックなど。
(2)科学的刺激
酸素の欠乏、薬物や有害物質の嫌なにおいなど。
(3)生物的刺激
害虫、寄生虫などにより人体内で産出される毒素。
〔内部的ストレッサー〕
(1)心労的刺激
対人関係や社会生活などによって生ずるひずみの蓄積。他人の言動などによる情緒的、精神的刺激。怒り、焦り、不安、恐れ、憎しみ、緊張など。
(2)身体的刺激
転勤、徹夜マージャン、深夜の勉強、不規則な食事など生体のリズムの乱れから生ずるひずみ。
通常、私たちが感じるストレスは内部的ストレッサーによる心因性ストレスです。人間関係が存在するところにはすべて心因性ストレスの原因があるといっても過言ではなく、とくに、ライフサイクルの節目節目(入試や入学、入社、結婚、出産、転勤など)で、ストレスを強く感じるケースが多いようです。また、暑さや寒さ、天候なども、知らないうちにストレスの原因となっているので、季節の変わり目や厳寒、猛暑の時期には注意が必要です。

ストレスを感じると体の働きはどうなるのでしょうか?
交感神経が緊張し、全身に適応体勢を指示します
心臓や胃腸などの働きは「自律神経」によって無意識にコントロールされています。自律神経には、活性化と興奮をつくり出す「交感神経」と、クールダウンさせる「副交感神経」とがあり、それぞれ逆の働きをする2つの神経の綱引きで、バランスをとっていることを覚えておいてください。
ストレッサーによる刺激はまず、自律神経の働きをコントロールする中枢がある間脳の「視床下部」へと送られ、交感神経を緊張させます。視床下部から「脳下垂体」へ緊急指令が出され、そこから腎臓近くにある内分泌器官、「副腎髄質」へと信号が送られます。
副腎髄質は、「アドレナリン」というホルモンを分泌して警戒態勢をしきます。アドレナリンは血圧の上昇や心拍数の促進、起毛、瞳孔散大などを起こします。私たちが突然、恐怖に出くわすと心臓がドキドキして逆毛が立ち、瞳を見開いたりするのは、このアドレナリンの働きによるものなのです。
また、アドレナリンは肝臓のグリコーゲンの分解を促進して、血糖値を上昇させます。また、血液中のアドレナリンは、脳や筋肉などに流れ、最終的には全身の交感神経を緊張させます。
やがて、刺激の原因が取り除かれれば、戦闘態勢は解除され、交感神経の緊張も解消されます。あとは消耗したエネルギーを栄養や睡眠などで補充させればよいわけですが、ストレスが長時間続いたり、解消後のエネルギー代謝が不完全な場合は、疲労、発病へと進展してしまうのです。

ストレスがたまると起こる病気はどんなものがあるのでしょうか?
胃潰瘍や高血圧、心疾患などさまざまな病気の誘引に
ストレスは次の3段階を追って進行します。
1.警戒反応期
ストレッサーの刺激を受けたことを、自分の生体内に知らせる時期。交換神経は緊張状態にあります。この時期は「ショック相」と「抗ショック相」に分かれます。ショック相は、体温や血圧の低下、低血糖、筋肉の緊張減退、血液の濃縮などが起こる。抗ショック相になると、アドレナリンが分泌され、戦闘態勢がしかれます。頭にカッと血がのぼって血圧が上がり、動悸が起こったりします。。
2.抵抗期
ストレスに耐えながら、懸命に頑張る時期。戦闘状態に入りますが、副腎髄質の機能などで安定した戦いができます。全身の機能が最も活動します。
3.疲はい期
刺激が強すぎたり、長期に渡ると頑張り切れなくなり、消耗してしまいます。抵抗力が弱まり、生体機能が衰えて病気が現れます。疲はい期に起こる主な病気は、次のようなものがあります。
・胃・十二指腸潰瘍
ストレスが強く長くなると副交感神経が胃に作用して、胃酸やペプシンの分泌量が増大し、胃壁を傷つけます。一夜にして胃に穴があくこともあります。
・過敏性腸症候群
、慢性的な下痢や、けいれん性便秘、下痢と便秘を繰り返すなどの症状が出ます。
・虚血性心疾患
心臓をとり巻く冠状動脈に動脈硬化などが起こると、信金を循環する血流が現象したり、途絶えてしまいます。狭心症、心筋梗塞などがあげられます。
・自律神経失調症
検査をしても異常がないのに、めまいや動悸、のぼせ、肩こりなどが起こります。

ストレスをためやすい人のタイプは?
まじめで神経質、融通のきかない人に多く見られます
一般に、ストレスへの適応力に欠ける人は次のようなタイプです。
・気まじめ
まじめで几帳面な人。がんばり屋。完全主義で融通がきかないため、適当なところで妥協できず、ストレスを背負い込んでしまいます。職場や仕事に一生懸命、適応しようとしようとするためです。
・神経質
小さなことも気にする人。短期で時間に追われている人、頑固で厳格な人は、小さなことでもすぐカッカして、その怒りがストレスとなります。
・取り越し苦労が多い
いつも心が不安な状態にあるため、心が休まる暇がなくなります。周囲に対してひどく気を配る人、自信を欠乏した劣等感型の人もこのタイプです。
・意欲的、精力的
競争心がひと一倍旺盛で精力的な人、社会から認められたい欲求が強い人は、思い通りにならなかったときの精神的な打撃も大きいです。。
これらの人は、自分でストレスをつくり出していることも多々あります。自分の性格を客観的にチェックし、思いあたる人は日常的に性格を管理することが必要です。

どうすればストレスをコントロールできるのでしょうか?
自分にとって最適なストレス水準を知ることが大切です。そのためには、まずは自分の長所、短所をよく認識し、自分の目標を常に把握しておくこと。その上で自分の力で達成が可能な目標を設定すれば、能力の過信によるストレスを予防できます。
ストレスを感じたら、その原因を分析し、どの程度のレベルかを客観的に認識する訓練をします。例えば、ストレスのレベルをABCの3段階に設定。そのときのストレスのレベルによって、「Bだから今日は早く寝よう」「Cだから1日休もう」などと決めておくと意外に効果があります。
日常生活でストレスを癒すコツは、深呼吸をしたり、散歩、趣味、旅行、温泉、運動、ショッピングなどを楽しむなどです。
また、友だちと本音のおしゃべりや愚痴は嫌なことを忘れるのに最適です。
早起きするのも一つの手です。出勤までに時間があれば、心身に余裕ができます。
夜更かししないことも忘れてはなりません。ストレス耐性をつくる副腎皮質ホルモンは朝、多く分泌され、深夜は最も少ないので、遅くとも夜11時には寝るようにこころがけましょう。
入浴は血行をよくし、体内にたまった乳酸を減少させる効果があります。

指圧・マッサージはこのようないわゆるストレス緩和に大きな効果が期待できます。定期的に施術を受けることで、ストレスの体内への貯蓄を防止しましょう。