眼精疲労
〈目のしくみ〉
目はカメラと同じような構造をしています。外から入った光は角膜(かくまく)→瞳孔(どうこう)→水晶体(すいしょうたい)および硝子体(しょうしたい)を通り、フィルムの働きをする網膜(もうまく)に到達します。光は網膜で電気の信号に変えられ、視神経(ししんけい)を通って脳の視覚中枢(しかくちゅうすう)に伝えられます。そこで、初めて私たちがものを見ることができるのです。
カメラのピント合わせに相当するのが水晶体です。この水晶体は毛様体筋(もうようたいきん)の働きによって、その形を変え、遠くや近くの物にピントを合わせています。
<ピント合わせのしくみ>
目のピント合わせは毛様体筋が収縮することによって起こります。毛様体筋の力を抜いてピント合わせのための力を全く使っていないときには、目は最も遠くにピントが合った状態になっています。
毛様体筋が収縮することによって水晶体の周囲に付着しているチン帯がゆるみ、水晶体は自らの弾力性で、膨らみが大きくなり、近くにピントが合うのです。あまり自覚はしていませんが、近くにピントを合わせるときには、毛様体筋を収縮させる努力をしているのです。
〈目が2つあるわけ〉
1つの目が失明したときの予備のために2つの目があるのではありません。2つの目があることによって、容易に遠近感や立体感を得ることができます。また片目で見るよりも両目で見たときの方が良い視力が得られます。
遠くを見ているときよりも近くを見るときには両目を内側に寄せなければなりません。したがって、近くにピントを合わせるためには、毛様体筋を収縮させるための努力と同時に、眼球を内側に寄せるための努力が必要です。これらの努力が高じると、目に疲れが生じます。
〈近視〉
近視って?
「近視ってどんな目?」ときくと、たいていは「遠くが見えない目」と返ってきます。正しくは「近視は近くが見える目」なのです。
近視はメガネなどの助けをかりなくても、近くにはピントが合います。しかし、裸眼では、どんなに努力をしても、遠くにはピントを合わせることができません。したがって、必要に応じてメガネなどの装用が必要です。メガネを用いないで本を読むことができれば、本を読むときに、ピント合わせのための努力はほとんど必要ありません。すなわち、近視は近くを見るのには最適な目なのです。
近視の多くはメガネやコンタクトレンズを作成するときに、遠くがよく見えるように作っています。
そのようなメガネやコンタクトレンズを用いて、読書をしたり事務作業をしている人の多くは、強い眼精疲労を生じています。25〜35歳頃から症状が出はじめ、その後徐々に症状が強くなってきます。しかし、近くがぼけて見えるとか、近くが見にくいとかは感じませんので、近くを見ているときに強いピント合わせのための努力が必要になっていることに気付いていません。
【近視の疲労予防策】
裸眼で読書ができる近視は、裸眼で読書を行ない、遠くを見るときだけメガネを装用するようにしましょう。またメガネを更新する以前に使用していた少し弱い度数のメガネを持っている人は、読書のときにはそのメガネを用いてみましょう。
そうすることによって、読書や事務作業のときのピント合わせに要する努力を少なくさせることができ、目の疲労を予防することができます。
〈遠視〉
遠視って?
「遠視ってどんな目?」ときくと、「遠くが見える目」と返ってきます。しかし、正しくは、「遠視はピント合わせの努力をしなければ、遠くにも近くにもピントが合わない目」なのです。
遠視が良く見える目と誤解されているのは、ピント合わせを行っているためなのです。遠視は遠くを見ているときにもピント合わせの努力を続けていますので、非常に疲れやすい目なのです。子供のときには目が疲れたと自覚する前に、近くを見ることに飽きてしまいますので、遠視の子供は読書好きにはなれません。
〈乱視〉
乱視って?
縦方向と横方向でピントの合う距離が異なる目を「乱視」といいます。まぶたを細めないで、遠くのビルの窓枠を見たときに、横枠よりも縦枠がよりはっきり見える目は乱視です。また、45歳以上の人では、新聞などの明朝体で印刷された文字が、正しい方向から見たときと、90度回転させて真横から見たときで鮮明さに差があれば乱視です。
ほとんどすべての人が乱視を持っています。弱い乱視があっても、全く問題にはなりません。強い乱視があると、視力低下や眼精疲労の原因になります。
〈眼位異常と目の疲労〉
外斜視は、俗に「ロンパリ」と言われています。片方の目が「ロンドン」を見ているときに、もう一方の目が「パリ」を見ていることから、そのように言われています。日本からは「ロンドン」を見るのも、「パリ」を見るのもほぼ同じ方向ですが、ドイツの「ボン」あたりから見れば、理解できます。
通常は、両眼とも真っ直ぐに目標物に向かっているのですが、気をゆるめると片方の目がそれてしまう人がいます。このような眼位異常が、ときに眼精疲労の原因になることがあります。メガネにプリズムレンズを用いることによって、疲労が治まることも少なくありません。広い範囲の網膜を凝固します。
指圧・マッサージは、目の周囲の筋肉、首、肩の筋肉の凝りを丁寧にほぐすことで、症状を軽減することができます。定期的な施術を受けることで、視力の低下の予防にもなります。