自律神経失調症
私たちの体は、気温の変化や精神的ストレスなど外からの刺激に対して、体内の状態を一定に保とうとする働き(ホメオスタシス)があります。この働きを担うのが「自律神経」で、内臓や血管の収縮・拡張、ホルモン分泌など、すべての器官を調整しています。
自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」という相反する働きをする神経が同居し、この2つの神経が綱引きをしながら働いて、体がバランスよく機能しているのです。ところが、ストレスなどの刺激が長時間続いたりすると、自律神経がそれを排除しようと頑張るあまり、綱引きのバランスが崩れてしまい自律神経失調症を起こすのです。
自律神経は全身の器官をコントロールするため、バランスが崩れると全身の機能に支障をきたして、さまざまな症状が出ます。最近は内科や整形外科などで検査をしても悪いところが発見されず、神経科、心療内科などの専門医を紹介してくれるケースが多くなりました。ただし「自律神経失調症だから」と思い込んで放置し、病気の早期発見を逃してしまうケースもあるので、注意して下さい。
自律神経失調症と、もっとも間違えやすい病気が「仮面うつ病」です。仮面うつ病はうつ病の一種で、不眠や食欲不振、倦怠感などの症状が前面に出て、精神的な症状が隠れているため、よく自律神経失調症と間違われます。
自律神経失調症は外からの刺激に対して、自律神経が体を守ろうと防御反応を起こして発症する病気です。仕事や人間関係の悩みや恐怖心など、精神的なものだけでなく、暑さや寒さ、痛さ、病気、けが、睡眠不足、騒音、空気汚染など、外からの刺激のほとんどがストレスといえます。
真面目で責任感が強い人や、几帳面で心配性の人、内向的な人などは、ストレスの影響を受けやすいので、注意が必要です。体質的には、冷え症や低血圧、虚弱体質、やせている人なども。また、女性に自律神経失調症が多いのは、思春期や更年期、出産後など、ホルモンの変調が自律神経に大きな影響を与えるためです。更年期障害は自律神経失調症の一種ですが、最近は男性にも起こることが学会で発表され、注目されています。40代後半になると男性ホルモンの減少によって自律神経が乱れ、めまいや吐き気などの症状を起こす男性が増えています。
毎日単調な日常生活を送っている人に効果的な運動が球技です。ボールのように丸い球にみられる予測できない動きは、気持ちを集中させ、気分転換をはかることができるのです。球技にはさまざまな種類がありますが、いつでも気軽にできるお手玉やけん玉もおすすめです。また、心身の緊張が高まると、呼吸が浅くなり、脈拍も早くなりますから、腹式呼吸で呼吸を調整し、緊張をほぐしましょう。まず、お腹をへこませながら、静かに深く息を吐きます。次にお腹に力を入れて1〜2秒、息を止め、ゆっくり力を抜いて自然に息を吸います。肺全体に空気がいっぱいになったら、1〜2秒、息を止めます。これを5〜6回繰り返して下さい。
指圧・マッサージも大変効果的です。背中の両側の筋肉に緊張が顕著にみられるので、これを丁寧にゆっくりとほぐすことで、副交感神経の活動を活発にし、自律神経のバランスを整えることができます。